「あなたの“タイポ買い”、教えてください!」Part.1

人気クリエイターが選ぶ“文字”にまつわるプロダクト

今回の特集では、いつもと少し趣向を変えて、グラフィックデザイナー、編集者、ショップオーナーなど、TYPEにゆかりのある方々を中心に、ジャケ買いならぬ、“タイポ”買い/“フォント”買いしたプロダクトについて伺いました。日頃から文字を扱っているプロフェッショナルたちは、はたしてどんなお買い物をされているのでしょうか? 全16名のクリエイターたちの私物を、前・後編に分けてご紹介します!
Text: 原田優輝

平林奈緒美 /「ゴミ袋」

購入場所: アムステルダムの金物屋
購入時期:2010年頃
使用フォント: 不明

「文字の印刷されているゴミ袋は、見るとどうしても欲しくなって世界中で買い集めている(大量に)。ベースがまっ白というものは実はあまりなくて、しかもかなり大胆に文字が刷られており、スペーシングなんかもメタメタ。自分がこんな職業なので、そんなテキトーなところにかえって惹かれたりします。男っぽくていいですよね」

平林 奈緒美

東京生まれ。武蔵野美術大学卒業後、(株)資生堂宣伝部入社。ロンドンのデザインスタジオMadeThoughtに出向後、2005年よりフリーランスのアートディレクター/グラフィックデザイナー。雑誌GINZAのアートディレクションをはじめ、アパレルブランドのビジュアルディレクション、NTT DOCOMO,HOPE(JT)等のパッケージデザイン、(marunouchi)HOUSEのサインデザイン、DREAMS COME TRUE・宇多田ヒカル等のCDジャケットデザインなど、ジャンルを問わず活動中。

長谷川踏太 /akiko yank「good evening tokyo」LP Designed by 立花ハジメ

購入場所:delaware scrap live @tetoka
購入時期:2014 初夏
使用フォント: ビットマップフォント

「ビットマップフォント部分を特殊インクでザラザラにしているところが魅力です。ビットマップのギザギザと手触りがマッチしてます。」

長谷川踏太

1972年東京生まれ。1997年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。その後、ソニー株式会社デザインセンター、ソニーCSLインタラクションラボ勤務などを経て、2000年ロンドンに本拠を置くクリエイティブ集団tomatoに所属。インタラクティブ広告から創作落語まで、そのアウトプットは多岐にわたる。2011年よりワイデン+ケネディ トウキョウのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任。

塚田哲也 /「新世界タイポ研究会オリジナル書体の母型と活字」

購入場所:台灣の日星鑄字行
購入時期:2013年4月
使用フォント: 新世界タイポ研究会オリジナル書体「横書き草仮名」「横書き仮名Script」「右から左」

「オリジナル書体で母型(活字を作るための金型)を彫ってもらえて、かつ活字を鋳造してもらえるところが台灣にあるっていうので大興奮してデータ渡してつくってもらいました。古い日本の仮名から発想した新しいデザインの文字を、台灣で活字にするっていう、いろんな手法と時代と場所とが錯綜しまくって面白いなぁと」

塚田 哲也(大日本タイポ組合)

秀親と塚田哲也の2人で1993年に結成。日本語やアルファベットなどの文字を 解体し、組み合せ、再構築することによって、新しい文字の概念を探る実験的タイポグラフィ集団。
文字通りモジモジしながら文字で遊んで21年。ロンドン、 バルセロナ、東京にて個展を開催。シンガポール、香港、韓国などでの企画 展に参加。12年古堅まさひこと共に日本科学未来館にて「字作字演展」を 開催。TokyoTDC会員。

田中義久 / herman de vries 「random objectivations」

購入場所:limArt
購入時期:2009年
使用フォント: Futura

「herman de vriesは常にFuturaを使用、またすべて小文字を使うという政治性を持っており、その一貫性と継続性が見るものにボディーブローのように効いてきて、結局僕もそれの虜になってしまった。」

田中義久

1980年静岡県浜松市生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業、2008年独立。グラフィックデザイナーとして、主に美術館やギャラリー等のVI、アーティストの作品集や共同制作に携わる。受賞歴に、BACON PRIZE、JAGDA賞、JAGDA新人賞、PromaxBDA DESIGN GLOBAL EXCELLENCE AWARDS銀賞、red dot awardなどがある。また飯田竜太(彫刻家)とのアーティストデュオ「Nerhol」としても活動中。

橋詰 宗 / 60年代のレコード

購入場所:さまざま
購入時期:さまざま
使用フォント: 不明

「60年代の時代を象徴するようにジャズ・ソウル・ファンク・スカ・カリビアン・ハイライフといったブラックミュージックのレコードは、たいていむさ苦しいほど熱いデザインがほどこされている。そのほとんどは名も無きデザイナーや、そもそもデザインとレコードづくりが分化されていない中でつくられた半ば偶然の産物ともいえる、しかし美しく強烈な印象をもたらす。そのほとんどになにかしら書体があしらわれているのだが、手書か活字か、そんなことどうでもよくなるような強烈な個性で彩られている。手持ちの特に強烈なものからいくつか選んでみた。」

橋詰 宗

1978年広島県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA) コミュニケーションアート&デザイン修士課程修了。さまざまな領域のアートディレクション,ブックデ ザイン,ウェブデザイン等を手掛ける一方、『D ♥Y』『HUMAN PRACTICE』『何に着目すべきか?』『紙と束見本』『( )も( )も( )も 展』など,実践と着目点をコンセプトにしたワークショップ,スクールや展覧会ディレクションを手がける。

坂本政則 / Copal Quartz Flip Clock

購入場所:不明
購入時期:不明
使用フォント: Helvetica Bold

「いわゆるパタパタ時計です。外観デザイン、質感、フォント及びフォントサイズ、全体で見た時の佇まいが「本当にバランスが取れたモノ」を探すのは意外と困難ですが、これは探し求めていたらやっと見つかったヴィンテージモノです。」

坂本政則

DELTRO INC.代表取締役。アートディレクター、デザイナー。1972年静岡生まれ。1999年よりフリーランスとして活動を開始し、以後、企業、ファッション、アニメ等様々なジャンルのアートディレクション、デザイン、プログラミングを担当。2009年に村山健と共に株式会社DELTROを設立。メディアやデバイスを限定しないデザイン+テクノロジーによる表現と、物事の本質と感動を伝えるべく活動を続けている。カンヌ国際広告賞、クリオ賞、One Show、TIAAなど国内外の広告賞を多数受賞。クライアントワーク/プライベートワーク問わず、オリジナルタイプフェイスの制作を積極的に行っており、19~24歳までの5年間、地方の眼鏡店に勤務し、接客の傍らオリジナルデザインの眼鏡フレームを制作していたという経歴も持つ。

若岡伸也 / 御朱印

購入場所:あちこちの神社、寺院
購入時期:ここ8年くらいです
使用フォント: 手書き

「神社や寺院で300円くらいで書いてもらえる御朱印を集めています。罰当たりな発想ですが、ありがたいものをコレクションできるというところが魅力です。」

若岡伸也(のらもじ発見プロジェクト/左)

1982年石川県生まれ。金沢美術工芸大学卒業。現在フリーのグラフィックデザイナー。

清水大輔 / ポスター

購入場所:アメリカ
購入時期:1990年代後半から現在まで
使用フォント: 不明

「HAND PRINTED(活版印刷)のポスターはところどころ擦れていたり、微妙に色の違いが出ていたりいて好きです。特に好きなミュージシャンのものがあったりすると即買いします。 タイポグラフィーのポスターは、特にアーティストやブランドにはこだわってないので、自分がいいなと思ったものを買っています。地図をモチーフにしたポスターは、今後LETTERS8にて販売予定です!」

清水大輔

LETTERS 8 ディレクター。 2013年8月より目黒区駒場の淡島通り沿いにオープンする。