古書店「BOOK AND SONS」が選ぶタイポグラフィ・ブック6選

タイポグラフィ本専門店による必読本セレクション

先日、東京都目黒区にオープンしたタイポグラフィ本専門店「BOOK AND SONS」。
文字好きの間ではすでに話題になっている同店のオープンを記念し、「BOOK AND SONS」を運営するデザイン事務所「フルサイズイメージ」代表・川田 修さんに、約1000点に上るラインナップの中から、必読のタイポグラフィ本を厳選して頂きました。

Interview: 原田優輝

タイポグラフィ専門の古書店「BOOK AND SONS」

今年4月に、東京・学芸大学駅から徒歩数分ほどのエリアにオープンした「BOOK AND SONS」は、「文字」にまつわるグラフィックデザイン本ばかりを集めた古書店。
このお店を運営する「フルサイズイメージ」は、Webやグラフィックデザインの仕事を中心に手がけるデザイン事務所で、オープン時に揃えられた店内のラインナップの大半は、同社の代表を務める川田 修さんが、個人的に収集していたものなんだそうです。

専門的な勉強をすることなくデザイン業界に入った川田さんが、若かりし頃にさまざまな書籍、作品集を手に、グラフィックデザイン、タイポグラフィにまつわる知識やスキルを、独学で身につけていった経験から、若いデザイナーたちにもそれらの本をまとめて見られる場所を提供したいという思いで、このお店をオープンしたのだと言います。

そんな川田さんが選んだ店内のラインナップは、タイポグラフィの知識やテクニックが学べる専門書だけにとどまらず、文字の歴史や成り立ちについて書かれたものなど、幅広いセレクションとなっています。
今回は、その中からTYPEの読者に向けて、オススメの”文字”本を紹介して頂きました。

温かみのある木製の什器が並び、落ち着いた雰囲気の中で本が選べる店内。奥には、ギャラリー兼コミュニティスペースも併設されています。

「BOOK AND SONS」店主が選ぶ”文字”本セレクション

1. 伝説のデザイン誌の希少なオリジナル本「Neue Grafik」

昨年、数量限定でLars Muller社から復刻した伝説のデザイン雑誌「Neue Grafik」。
ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンらにより創刊されたこの雑誌のオリジナルがどんどん希少になっている中での復刻は喜ばしいですが、いまから50年以上前に発行されていたオリジナルを手に取ると感慨深く、スイスのモダングラフィックデザインの息吹を感じられます。
リズム感のある書体と図版のレイアウトを見ているだけでも楽しめます。

2. バウハウスのグラフィック作品を網羅「Bauhaus; drucksachen, typografie, reklame」(Edition Marzona)

バウハウスのグラフィックデザインをまとめて掲載した一冊。
制作された年代ごとに作品が掲載されているので、時代を追いながら見ていけるのも楽しい。
広告、レターヘッドなどの印刷物、タイポグラフィはいま見ても色あせず、デザインのヒントになる要素が満載です。
バウハウス時代の独特の書体やシンプルで力強いグラフィックは現代にも通用しそうです。

3. 20世紀ドイツを代表するデザイナーの作品集「Otl Aicher」(PHAIDON)

20世紀ドイツを代表するグラフィックデザイナーで、フォント「Rotis」をデザインしたオトル・アイヒャーの作品集。
マックス・ビルとウルム造形大学をつくった教育者としても知られ、彼の代表作であるルフトハンザ航空や1972年のミュンヘン・オリンピックの作品などがまとめられています。
また、彼がデザインしたピクトグラムも多くまとめられ、ドイツらしいミニマムなデザインが好きな方にはオススメです。

4. 書体デザイナーの仕事がわかる「文字をつくる 9人の書体デザイナー」(誠文堂新光社)

普段あまり意識することのない、日本人の書体デザイナーの仕事にフォーカスした一冊。
2010年に出版された比較的新しい本ですが、非常に興味深いテーマで、面白く読み進められます。
いつも何気なく使用しているフォントがどのようにつくられているのか、また、それらをどのように使用するべきかということを、書体デザイナーへのインタビューを通じて知ることができる良書です。

5. マックス・ビルのグラフィック作品をまとめた「Max Bill: Typography, Advertising, Book Design」(Braun)

日本でもファンが多いマックス・ビルのグラフィック作品をまとめた一冊。
工業デザイナー、アーティストとしても著名な彼のグラフィックデザイナーとして仕事をまとめて見ることで、ポスター、カタログ、ブックデザインなど幅広い分野で活躍したマックス・ビルの軌跡を辿ることができます。
彼の幾何学的で洗練されたデザインが好きな方にオススメです。

6. 公共施設のサインにフォーカスした「Wayfinding and Signage: Construction and Design Manual」(Dom Publishers)

ホテルや美術館、医療施設など公共の場では、どのようなフォントが使用されているのか?
書体を勉強している方なら必ず気になるテーマに焦点を当てた本。
読みやすさ、わかりやすさを追求してデザインされた公共施設のサインをまとめて見ることができるワクワクする一冊です。
「この空港で使用されているフォントは何?」と考えるだけでも楽しくなってきます。

いかがだったでしょうか?
「誰もが日々触れている文字について何かしら興味を持った時に、この場所に来ればなんとかなると思ってもらえるような、駆け込み寺的なお店にしたい」という川田さん。
今後は、併設のギャラリースペースで、タイポグラフィ関連のイベントなども開催していくそうなので、ぜひ一度足を運んでみてください。

BOOK AND SONS

Address : 東京都目黒区鷹番2-13-3
Tel : 03-6416-3061
URL : bookandsons.com