世界各地の"文字"が集まる専門店

「LETTERS8」店主・清水大輔インタビュー

2013年に目黒区駒場にあるビルの一室にオープンした「文字」にまつわるプロダクトやインテリアを取り扱うショップ「LETTERS8」。ネオンサインや看板などに使われていたさまざまな文字が世界各地から集められたショップに入り、オリジンの異なるアルファベットたちが組み合わされた店内のディスプレイを見ていると、それぞれの文字が持つストーリーに想像が膨らみ、それらをコレクトすることの面白さも肌で感じることができます。そんな日本初の"文字"専門店の店主・清水大輔さんにお話を伺ってきました。
Text: 原田優輝

ーなぜ文字専門のショップを始めようと思ったのですか?

このお店を始める前に、アメリカから古材を輸入し、アパレルや美容室、レストランなどに納めている会社で15年くらい働いていたんですね。その会社は一般のお客さん向けにも、アメリカの土臭い雰囲気のあるアンティーク雑貨や金物、塗料などを販売するショップを運営していたのですが、僕は昔からアメリカンカルチャーが好きで、20代の頃から将来は独立してお店を構えたいと考えていたので、ここでノウハウを学びたいという思いもありました。まだ入社する前に、お客さんとしてお店に行った時に、コンクリートを型に流してつくられた20,30cmくらいのアルファベットのオブジェがバラバラと置かれていたのですが、それを見た時にアルファベット自体を売るというのも面白いなと思ったんです。その後、いまから6年ほど前に、「KIDIMO」という文字を売るショップがフランスにあるということを知って、こういうことを日本でもやりたいと考えるようになりました。

ー文字のどんなところに魅力を感じたのですか?

昔から、60~70年代のラスベカスにあったようなネオンサインなどの雰囲気が好きだったんです。こういうものは、もともと目立つために作られているのでインパクトがあるじゃないですか(笑)。看板やネオンサインの文字には人の目を惹きつける力があるし、そういうものばかり集めたら面白いんじゃないかと。また、前職の関係で、お店をやっている人や設計事務所、内装関係の業者さんなどの知り合いが多かったので、古材を売るのと同じようにアプローチしていけるんじゃないかと考えていましたし、洋服を買う感覚でインテリアにお金をかける人が増えてきていることなども踏まえ、まだ誰もやっていないニッチなテーマに特化したお店をやるのも面白いんじゃないと思ったんです。

ーお店の商品はどのように集めているのですか?

海外のフリーマーケットやジャンク系に強いアンティークモールなどを片っ端から回って地道に集めています。もともと看板などに使われていた文字がほとんどなので、どうしても人が集まる都市部じゃないと手に入りにくいのですが、買い付けはL.A.などアメリカ西海岸に行くことが多いです。特にアメリカで多いものは、奥行きがあって中に必ずネオンかLEDが入っていて、光るようになっているんです。看板を解体する際に壊れてしまったのか、手前のアクリル部分が取れてしまっているようなものも多いのですが、この文字はどこでどのように使われていたんだろうと想像するのも楽しいですね。また、お国柄のようなものもあって、アメリカはポップで派手なものが多いですが、フランスのものなどにはだいぶ雰囲気が違うものもあります。書体としては、ヘルベチカやゴシックっぽいもの、イタリック系など使われるものはある程度決まっているようですが、たまに変わった書体などもあって、お店ではそういうものから売れていきますね。

ーひらがなや漢字など日本語のものはあまり手に入らないのですか?

知り合いの看板屋さんに、お店がなくなったりして看板を壊すことがあったら譲ってほしいとお願いしたこともあったのですが、日本の場合は行政の決まりが厳しくて、解体業者がちゃんと廃棄したということを記録しないといけないらしいんですね。海外でもそういうことはあるのかもしれないですが、うちにもアメリカの有名なハンバーガーチェーンの看板で使われていたであろう文字を置いていますし、とりあえず売れるものは売ろうという考えが強いからか、色んなものが流れてくるから面白いんです。

ー時代的には、いつ頃のものが多いのですか?

置いている商品は、ほとんどが最近まで使われていたものですね。鋳物や琺瑯でつくっているような文字もあって、これらはおそらく30~40年代頃につくられたものだと思うんですが、古いものは割と地味だったりします。やはりお店では、赤や黄など原色系のポップなものから売れていきますね。

ーお店にはどんなお客さんがいらっしゃるのですか?

やはりメインはアパレルや美容室などお店をやられている方で、その他では出版関係の方などが撮影用に買われたりということもあります。インテリア好きの一般のお客さんがカワイイと思った文字を一文字だけ買っていかれることなんかもあります。また、お店を始めてみてわかったのですが、表札などに使える小さな文字の人気が高いんです。うちのお店では文字を組み合わせて言葉にして飾っていることもあってか、お店の名前や表札用の名前などを集めようとする方が多いんです。ただ、最初はみなさんテンションが上がって探すのですが、特に文字数が多い店名や名前の場合は大変みたいです(笑)。

ー使いたいアルファベットが一文字だけ足りないということもありそうですね。

そうなんですよ(笑)。ただ、こちらで新しいものをつくることもできるので、場合によっては既存の文字の雰囲気に合わせて足りない文字をつくることもあります。例えば、以前にACME Furnitureというアメリカのヴィンテージ家具を販売しているお店から、「ACME」という文字を同じ書体で揃えたいという要望があったのですが、ご希望されていた文字がヘルベチカだということがわかったので、足りない文字を新たにつくって納めさせて頂きました。

(左)ACME Furniture 内装協力、(右)『THE DAY』表紙協力

ー雑誌の撮影などに協力することもあるようですね。

広告媒体等の撮影小物としてのリースやファッション誌の撮影場所として店内を利用して頂いてます。今後は、つくった立体の文字を写真でしっかり撮ってアーカイブして、そのデータを販売するということなどもできればと考えているのですが、PC関係が弱いので、なかなか進んでいません(笑)。

ー今後やっていきたいことなどがあれば教えて下さい。

先ほども少しお話ししましたが、こういうものは欲しい文字がすべて揃うかどうかがとても重要なので、今後はオリジナル商品も増やしていこうと考えていて、商品化を進めているところです。文字そのものを売るだけでなく、照明にアルファベットを入れたものなど、インテリア寄りのプロダクトなども文字と絡めて売っていきたいと考えています。あとは、同じ文字つながりでハンドペイントの看板を新旧問わず集めて販売することなど、今後はそういうことにも取り組んでいきたいですね。ゆくゆくは、ここに来たら文字に関わる色んなものが手に入ると思ってもらえるようなお店にできればいいなと思っています。

Information

LETTERS 8
Address : 東京都目黒区 駒場1-16-12 ビル秀美3F
Tel : 03-6407-1958
E-Mail : info@letters8.com
Open : 13:00-19:00 (Tue-Fri), 13:00-18:00 (Sat)
Close : Sun&Mon

清水大輔

LETTERS 8 ディレクター。 2013年8月より目黒区駒場の淡島通り沿いにオープンする。